すいよう塾の秘密のノート

茨城県、栃木県で活動する個人塾講師・プロ家庭教師の読書日記です。

読書感想 : 『テレビが政治をダメにした』

テレビが政治をダメにした (双葉新書)

テレビが政治をダメにした (双葉新書)

 

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官僚、学者を経て政治家となり、民主党政権時代に文部科学副大臣を務めた著者によるテレビ批判の本です。

政治家のメディア批判というと、政治家にとって思い通りにならないメディアに対するイライラを動機付けとした、一方的で客観性を欠いたものなのではないかと考えてしまいます。
本書は違います。冷静にテレビと政治の関わりを分析し、民主政治が健全に機能するために果たすべきメディアの役割を今のテレビが果たしていないことを、歴史的・技術的な背景についての考察も加えつつ、様々な事例を引きながら説得的に示します。

政治とテレビの現状を知るのに格好の本です。 

 

著者によれば、テレビメディアの問題の根幹は「視聴率至上主義」です。

視聴率至上主義──テレビメディアの問題としてこれまでも指摘されてきたことです。視聴率が取れれば、高い広告収入を得られる。視聴率を上げるためにはヤラセ、煽りも辞さない……テレビメディア問題の多くは「視聴率をいかに上げるかがすべて」という、視聴率至上主義が生み出したものです。

この姿勢は、震災、原発事故という一大事の報道においてすらぶれることはありません。著者が文部科学副大臣として原発対応に当たっていた際に、多様な情報の伝達をメディアにお願いした時のことです。

あるテレビ局のプロデューサーからは耳を疑うような返事が返ってきたのです。 「水素爆発の映像のほうが数字(視聴率)が取れる。繰り返し流していても数字が取れるんですよ」 

著者でなくとても、たしかに耳を疑うような言葉です。本書にはこうした視聴率至上主義の成れの果てを示す事例がいくつも示されます。

そしてそうしたテレビの視聴率至上主義に巻き込まれ、さらには翻弄され、(著者の志向する「熟議の民主主義」から)堕落していく政治の姿が浮き彫りにされます。

 

その一例を紹介します。

テレビメディアにとって視聴率は高い広告収入につながります。政治家にとっては、視聴率は得票率につながるようです。著者は「TVタックル」という高視聴率の政治バラエティ番組を取り上げ、その番組に出演回数の多い議員の選挙での際立った強さを数字を上げて指摘しています。

テレビ出演の多い政治家は往往にしてメディア受けだけを意識し、カメラの回っていないところでは汗をかかないようです。著者はそうした政治家を冷ややかに「テレビ政治家」と呼んでいます。
テレビ政治家はテレビでテレビ受けする威勢のいいことを言ってしまうばかりに、実際の交渉において切れるカードを狭めてしまっているようです。「テレビでああいっていたでしょ」とつっこまれ、交渉を積み重ね煮詰めていくという作業ができない。つまり、利害調整を行いつつ政策を法律へと落とし込んでいくという政治家に課せられた本来の仕事の場面で、テレビ政治家は頼りにならないのです。著者はテレビ政治家を入れずに仕事をしたほうが交渉が進み、仕事の成果も上がるとも述べています。

テレビであれ他のメディアであれ、発信力のある政治家は重宝されているのかと思いきや、そう単純ではないようです。

 

ところで、私の家にはテレビがありません。かれこれ20年ほどになります。つまり私はテレビの影響圏の外側で生活しています。そんな生活をしているからでしょうか。本書を読んで得た一番の収穫は、テレビの影響力は今なお大きいと確認できたことでした。